昔の日本共産党は内乱を策していた
~日本共産党を支持する左翼知識人に問う~
黒坂 真(大阪経済大学教授)
日本共産党はどんな政党なのか。
日本共産党の宣伝によれば、日本共産党は結党以来、日本の平和と民主主義を守るために、治安維持法、特別高等警察による弾圧にも屈せず闘ってきた政党で、これを信じている左翼知識人は少なくない。
現在の日本共産党も高く評価している「32年テーゼ」(日本における情勢と日本共産党の任務に関するテーゼ。「日本共産党綱領問題文献集」日本共産党中央委員会出版局、に掲載)には、次の記述があります。
「現在の時期にたいする主要な緊切な行動スローガンは次のごときものでなければならぬ。
(1) 帝国主義戦争反対。帝国主義戦争の内乱への転化。
(2) ブルジョア=地主的天皇制の転覆。労働者農民のソビエト政府の樹立。
この当時の日本共産党は、世界共産党(コミンテルン)の一支部としてスターリンとソ連共産党に忠誠を誓っていました。今の金正恩、朝鮮労働党と、在日本朝鮮人総連合会の皆さんの関係によく似ています。
スターリンとソ連共産党は日本共産党に、内乱を起こすことを目標とさせ、日本をソビエト化しようと策していたのです。32年テーゼはさらに次のように述べています。
天皇制の転覆の瞬間において、全国にわたり広範に、労働者農民ソビエトを樹立する事、ブルジョア=地主的独裁の国家機構の完全なる粉砕のために逃走する事。
労働者農民の武装、プロレタリア赤衛軍の創設、議会や中央および地方の権力機関の解散、なども32年テーゼは主張しています。内乱とは平和と民主主義の破壊そのものです。議会を解散せよ、というのですから、議会制民主主義を完全に破壊しようという話です。
労働者農民の武装、プロレタリア赤衛軍の創設とやらを当時の庶民に日本共産党員が熱心に提案しても、「はいそうしましょう」と答える方がどれだけいたでしょうか。議会を解散してソビエトを結成しよう、と大真面目に考える労働者がどれだけいたでしょうか。
昭和恐慌の日本で、庶民の生活は苦しかった。ロシア革命を成功させ、労働者の国をつくったから失業が完全になくなった、ソ連は労働者の祖国だというソ連共産党の宣伝に魅了されてしまった日本の知識人は少なくなかった。野呂栄太郎、宮本百合子、小林多喜二らです。
治安維持法には行き過ぎもあったと思いますが、武装して内乱を起こそうという連中は逮捕して投獄しなければ、本人たちのためにもならない。
市川正一氏の公判記録(「日本共産党闘争小史」大月書店、昭和29年刊行)を読むと、平田という検事が一生懸命、市川氏に現実は貴方の思っているようではないと説得していたのではないかと思える記述があります。市川氏は説得を全く受け入れず、公判でも武装闘争の必要性を叫んでいます。こんな連中の長期投獄は当然です。特別高等警察の皆さんが、日本の平和と民主主義を守るために大いなる貢献をしたのです。
今でも、日本共産党を支持する左翼知識人はたくさんいます。その方々は、32年テーゼや、日本共産党第八回大会で宮本顕治氏がソ連を礼賛した史実をどうお考えなのでしょうか。市川正一氏の「日本共産党闘争小史」を読んでいる方がどれだけいるでしょうか。
日本共産党を支持すると公に言明している方が、日本共産党の基本的な文献を読まないで支持を表明しているのなら、書を読み、自分なりに咀嚼して世界を把握するという知識人の本分を忘却していると言わねばなりませんね。
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